長岡生コンクリート

2022/09/17

【注目】「解体コンクリート塊を100%利用して作るコンクリートの研究」東京大学

【注目】「解体コンクリート塊を100%利用して作るコンクリートの研究」東京大学

先日、戸田建設の東さんに伴われる形で訪ねた東京大学酒井雄也先生との面談は衝撃的な未来を孕んでいるようだ。僕のライフワークと言っていい「残コン」とこの技術を組み合わせたら。夢は広がっていく。



解体コンクリート塊を残コンに置き換える

解体コンクリート塊100%コンクリートに再利用

知財図鑑より引用

高校の後輩でもある戸田建設の東舞(ひがしまい)さんから声をかけてもらった。

すごい面白い研究をされている先生がいる。

ぜひ、お会いして話を聞いてみよう。

なんでも、解体コンクリート塊を100%コンクリート製品として蘇らせることの技術だという。

昔から僕のわだかまりというか疑問というかを解決してくれるような研究だ。

知られているように現在解体コンクリート塊の大半はコンクリートではなく再生路盤材料など道路や土木など他分野の材料に用いられている。

クローズドループではないのだ。

フライアッシュや高炉スラグなどスラグと同じ、「他の産業・分野に押し付けている」利用方法でしかない。

普通に考えて、供用が終わったコンクリートはそのままコンクリートに戻すのが筋だ。

そして、なるべくセメントは使わない方が好ましい。

さもなければコンクリート産業は永遠に大地を削り続けなければならない。

お話を伺うに、本技術ではセメントも一切用いることなくコンクリート同等以上の強度を発現するという。

やばい、理想的。

どうやって解体コンクリート塊がコンクリートに戻るのか?

まず、解体コンクリート塊をボールミルで冒頭の写真の粉のように粉々に粉砕するそうだ。


ボールミルは、粉砕機の1種で、セラミックなどの硬質のボールと、材料の粉を円筒形の容器にいれて回転させることによって、材料をすりつぶして微細な粉末を作る装置である。(Wikipedia


その粉を型枠に詰めて高圧状態に晒したまま高温で養生(オートクレーブ養生)する。

たったそれだけで、コンクリートの強度を凌ぐコンクリートになってしまう。

現在はブロックや梁などプレキャスト部材への適応を検討している。

詳しいメカニズムは専門外なので恥を晒すのは控えたい。

先生、残コンでも同じことですよね?

生コンスラッジとは現場で利用されず工場に戻ってくるいわゆる「残コン」を洗浄し砂や砂利・砕石を回収した後のスラリーをフィルタープレスで圧搾して生成された副産物(大半は廃棄物として高額で捨てられている)。

酒井先生によると、「生コンスラッジを一度利用したことがあるが最も強度が大きかった」という。

つまり、コンクリート塊は弱材齢であればあるほど高強度を発現する。

先生、残コンですよ

ついつい、初対面で、しかも30分も遅刻した分際で、東大の先生に向かって、断言してしもうた。

(当初、本郷の東大だと思いこんでいて余裕かまして前段に野口貴文先生を訪ねたら「宮本さん、酒井先生はこっちじゃないよ、駒場だよ」と教えてもらい場所が違うことが発覚、慌ててタクシーに乗り込んだが30分遅刻した)

絶対、残コン。

間違いない。

この技術は大量に存在する未利用資源「残コン」を一つの仕入れルートとして研究・開発・実装すべき。

確信している。

絶対に残コンで行くべきと確信する理由

現在仲間達と開発を進めている(仮称)残コン砂がその答えだ。

残コンステーションで造粒直後のフレッシュ造粒コンクリートを振動ぶるいやトロンメルなどで直ちにふるう(5mm U)ことで得られる砕石(左)はそのまま生コン工場でJIS生コンの砕石として再利用。

残った残コン砂(右)が乾いた直後にボールミルで粉々にする。

先生、これですよ。

それが、僕の確信だ。

酒井先生によれば硬化にはカルシウムだけでなく適度なシリカの存在が不可欠だという。

成分は生コンスラッジと全く一緒(ちょっとシリカが多いかも?)なので間違いなくコンクリートになる。

本技術唯一のネックとも言える高圧・高温も量エネできるかもしれない。

何せ、日本中に生コン工場は存在するし、さらに言えばそんな生コン工場の近くには絶対確実にプレキャストコンクリート工場があるはずだから。

出来立てホヤホヤの残コン砂を直ちに製品工場に持ち込みコンクリート製品を造ることができれば物流コストだって最低限に収めることができよう。

あれ? もしかして? 混和材にするのが1番早いかも??

ここではたと気づく。

ていうか、わざわざエネルギーを使って運んで作ってコンクリート製品を作るよりも、生コンクリートに使えばいいんじゃなかろうか。

大変元も子もない発想で恐縮だが、そう思ってしまったのだから仕方ない。

例えばこの粉は明らかに高流動コンクリートの材料分離抵抗性を増進させるフィラー・石粉として使えるはず。

SDGsおじさんや脱炭素おじさんが大好きなCO2固定だって向いてるだろう。

およその成分はCa(OH)2なわけだから炭酸化養生を経ればCaCO3になる。

脱炭素がうたえる高流動コンクリートの誕生である。

(先生の専門外ということもあってあまり関心を持ってもらったようには思えなかったが)

ただ、これなら、本技術最大のネック高温・高圧というエネルギーを使わずに済む(せいぜい、ボールミルの動力)。

いいじゃん。

省エネルギーコンクリート。


以前から意識的にアイディアや発明の類は直ちにブログとして全体にアーカイブするようにしている。

先日、当社が大変お世話になっている特許事務所(山口特許事務所)の山口真二郎先生に教わった。

「宮本さんのようにフルオープン・爆速で変化し続けるのが最強」

別件のあれこれを引用した先生のコメントだったが、通常特許や商標など権利を持つ者が強いはずなのに、僕のように権利化せずにガンガン変化しようとする意図を、なんと弁理士のお立場からお褒めいただいたのだ。

確かに、白岩さんなど、本来の開発する努力を怠っておきながら金儲けや権利化(知財化)ばかりをうんぬんしている向きもあるが、まず、絶対に成就しないだろう。

少しでも僕たちを出し抜こうとする意図を示したらそっこー潰して差し上げるから楽しみにしとけよ。

発明者の武南さんにも連絡しておきます。

山口先生にも本件は既に依頼済みだ。

30年前に論文発表されている炭酸カルシウムを使ったコンクリートを、さも自分達が最初に発明した脱炭素コンクリートです、と日経新聞に報道発表している大成建設さんもそうだが、パクっておきながらなんなんだという気持ちでいっぱいである。

土木学会年次講演会論文2022.pdf

閑話休題。

炭酸カルシウムを利用した高流動コンクリートは僕の敬愛する鹿島の坂田昇さんの専門領域だ。

自己充填によりコンクリート打設を省エネ・省人化する。

誰もが求める現代のコンクリートと言っていい。

しかも、「脱炭素」を謳える。

夢みたいじゃないか。

よーし、がんばろっと。

いや、頑張るのはやめとこっと。

楽しもうっと。

解体コンクリートや残コンを再利用して作る高流動コンクリート用脱炭素フィラ

面白いことになってまいりました。



宮本

宮本 充也

主な著者
宮本充也

危険物取扱責任者(乙4)/1級(舗装・造園・建築・土木)施工管理技士/コンクリート主任技士・診断士

毒物劇物取扱責任者/日本農業検定(1級)/エクステリアプランナー(2級)/運転免許証(大型・中型)

勉強中の資格:採石業務管理者/2級FP技能士