2023/01/13
【実証】「2023年スラッジがオワコンに!」スラッジオワコンの製造・施工
岡山県。白石建設武南さんの思いつきで急遽始まったスラッジ水で製造したオワコンの研究・実装。生コン工場の強みは「すぐに形にできるところ」お家芸をそのままに実装されたスラッジオワコンは検討の余地は多く残るものの、コンクリート産業の明るい未来の兆しとなった。
スラッジオワコンの研究・実装が始まる
高濃度スラッジ水で製造する生コンクリート
水槽に貯蔵されているスラッジ水(白石建設・岡山)の濃度は20%。
関連記事:「2023年スラッジがオワコンに!」残コンとスラッジ水をふんだんに配合した造粒ポーラスコンクリート
昨日の着想(スラッジ水を用いたオワコン製造)が今日実装される。
18-8-20(N)をベースに練り水をスラッジ水に置換すると直ちに凝結(スランプダウン)が生じる。写真はスラッジ水の量を調整(500kg超/m3)してスランプを17.5cmとしたもの。
Y弾(高分子)でスラッジ生コンをオワコンへ
バインダー「Y弾」(高分子)の作用で造粒されたスラッジ生コンの見た目はまさに「オワコン」。
【参考①】オワコンとは?
Y弾で造粒されたポーラスコンクリートは「オワコン」という名称で流通している。
施工完了後乾燥したオワコンの様子。ポーラス構造となっており水を通すため透水性コンクリートとしての機能を果たす(排水、雑草対策など)。
【参考②】オワコンの作り方
オワコンは通常の生コンクリートを原材料として「Y弾」(高分子)を後添加して製造できる。
スラッジオワコンの施工
オワコンの施工は「敷き詰めるだけ」(敷設・均し・転圧)が特徴であり、一般・DIYerなど広く施工が行われている。こちらのスラッジ(を大量に含んだ)オワコンは夏ともなれば繁茂する雑草や雨天時ぬかるむ構内の舗装として採用された。
スラッジオワコンで雑草・ぬかるみ対策After
スラッジオワコンAfter。周囲の様子を見れば雑草がいかに強烈か、また、手前側の地盤を見るに雨天時のぬかるみは容易に想像がつく。オワコンが施工されたことにより、雑草の繁茂とぬかるみの発生を防止することができる。
別の角度から。オワコンは生コンクリートと異なり流動性がないため法面(傾斜)部分にも施工が可能。雑草の繁茂は抑えつつも大地が雨水を涵養することを妨げない。建築・土木のみならず、造園や農業といった分野での応用も見込んでいる。
生コンスラッジとは?
生コン工場に持ち戻される副産物「残コン」などにより生じるスラッジ(写真)の処分コストは年々高騰し生コン工場の経営を圧迫している。
【参考③】スラッジ水は飽和水酸化カルシウム溶液
写真引用:日本コンクリート工業株式会社
既往研究ではすでにスラッジ水の上澄水(アルカリ水)と二酸化炭素(排気ガス)を反応させ炭酸カルシウムを製造する(二酸化炭素の固定)方法が進んでいる。写真は「エコタンカル」という製品。
【参考④】ポーラス構造はCO2との接点が大きい
表面の水を吸収するオワコンの動画。ポーラス構造は水も空気も往来が妨げられることがない(呼吸する)ためCO2との接地面積もそれだけ大きい。さらに、スラッジオワコンの場合はとりわけ水セメント比(W/C)が高くなり、中性化(CO2固定)もそれだけ進みやすく、また、含まれている水酸化カルシウムもスラッジ水の分多くなるため、CO2収容量もそれだけ大きくなる。
進む! スラッジオワコン 研究・実装
写真引用:1級土木.net
写真は法面保護に用いられているコンクリート(吹付モルタル)。昨日の試験製造・施工に別件で偶然居合わせた神戸大学鈴木麻里子先生曰く、「ため池でも利用できそうな気がします(堤体表面・法面の安定を目的としたもの)」とのこと。
思いつきがたった1日で出来上がってしまって驚いている宮本さんですっ。
現地に立ち会っててこれはとてつもない潜在性がある僕自身痛感しました。
もちろん、単位水量が500kg超(スラッジを引いたとしても500kg近い)となるため、施工管理(締め固めで空隙が潰れないための管理など)や今後の配合修正が重要になると思うけど、これまで「捨てていた」材料がそのまま「有効な」原材料になるっていうんだから驚きだよね。
オワコン所定の「雑草」「ぬかるみ」といった問題も解消できちゃうしね。
残コンさん、残コン姐さん。
引き続き、後押しよろしくお願いしますっ。
作者・宮本充也