2022/01/29
【350億】【NEDO】「GI基金《CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト採択》本当の意味について」(月刊残コン Vol.54)
昨日NEDOよりGI基金「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」の採択結果が公表された。鹿島建設らカーボンネガティブコンクリートの取り組み。そして、RRCS会員で構成されたコンソーシアム、CP(Carbon Pool)コンクリート(安藤間ら)。採択されたことの本当の意味とは。
⚫︎参考:https://www.nedo.go.jp/content/100941899.pdf
「JIS A 5308」「独占禁止法適応除外」グレート・リセット
日本エクステリア建設業協会より、令和3年度 2級エクステリアプランナーの合格者受験番号一覧が発表された。
見事、この僕宮本充也はその栄冠を勝ち取った。
この快挙はおそらく業界全体を巻き込んだ大きなうねりを呼ぶことになるだろう。
とかじゃない!
呼ばない!!
ちゃっかり、自慢をしている場合ではない!!!
NEDOである。
グリーン・イノベーション(GI)基金だ。
国家予算350億円である。
辺境のちっぽけな資格取得の話をしている場合じゃない。
そう。
国家プロジェクト「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」にこの度あの坂田昇率いる鹿島建設ら(カーボンネガティブコンクリート)と、そして我らが野口貴文先生が率いるRRCSで構成されたチーム(安藤間ら、カーボンプールコンクリート)が採択された。
この、歴史的ともいうべき大事件について、実際このことは僕たち建設・コンクリート、とりわけ生コン産業にどのような意味をもたらすのか。
そのことについて、以下に私見を述べたいと思う。
GI基金採択本当の意味について
(出典:https://www.kajima.co.jp/news/press/202201/pdf/28c1-1.pdf)
(出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000069731.html)
眼目は、脱炭素の是非じゃない。
僕自身、行きすぎた脱炭素の論調に戸惑っている。
ただ、本件にはCO2を減らすべきとか、減らすべきではないとか、そんな論調を超越する意味が潜んでいる。
向こう10年間でコンクリート関係企業数十社を巻き込んだ350億円規模の国家プロジェクトが動き出す。
目的は「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」だ。
そのビッグプロジェクトを率いるキーパーソンは昨年RRCS主催の対談で意見交換をしている。
こちらの対談ではほとんど「脱炭素」については語られていない。
主眼は「JIS A 5038」や、「疲弊する生コン産業」などについて。
二人が率いるコンソーシアムがそれぞれ経済産業省(JISの監督官庁)が管掌する国家プロジェクトに採択された。
そのことが、今後の10年間で、どのような影響をもたらすのか。
「脱炭素」は言ってみれば「水戸黄門の紋所」平伏するしかない?
今日日、猫も杓子もSDGs、ESGだ。
みんな、本当にそう思ってるのか思っていないのか知らんが、SDGsバッヂをつけている。
それがいいとか悪いとかはもはや論点ではない。
要は、世の中がSDGsに対して文句をつけることができない、という点が重要。
さて、生コン産業の現実に目を転じよう。
僕が知る限りのこの20年も一貫して下りのエスカレーター。
往時、年間2億m3に迫った出荷量は現在9,000万m3を割り込んでいる。
拡大再生産を前提に設計された「独占禁止法適応除外」生コンクリート協同販売(カルテル)は各地で軋んでいる。
また、JIS A 5308は安心・安全な生コンクリートの供給を保全する一方、生コン製造ラストワンマイルから自由を奪っている。
残コンを用いたリサイクルコンクリートなど、規格に規定されていないイノベティブなプロダクトの普及の妨げとなっている。
産業全体に閉塞感が漂う。
建築・土木にとって土台と言っていいコンクリート産業に危機感を募らせるものの、具体的に何をどのように成せばいいのかを知っている、あるいはそれができる人物はそうはいない。
僕の知る限り、それができるであろう二人の傑物が率いるコンソーシアムが、国家プロジェクトを指揮していることが注目すべき点なのだ。
今後、この国家プロジェクトはこれまで分断されてきたあらゆる建設関係者とりわけコンクリート関係者の交流を促すことになる。
RRCS加盟企業は100団体、鹿島らコンソーシアムには58団体が参画する。
あらゆる建設・生コン関係団体は、こちらのプラットフォームにいやでも無関心ではいられなくなる。
これまで残コンをはじめとする辺境で看過されてきた不条理(「JIS A 5308」「独占禁止法適応除外」など)は「脱炭素」SDGs、ESG、そして国家プロジェクト(国策)という紋所の前で「できない理由」で対抗できなくなる。
生コン情報の電子化や、JIS A 5308の大改訂などを拒み、時代の要請に応えようとしてこなかったあらゆる取り組みは、この紋所の前で打破される。
生コン革命。
イノベーション。
CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト2件採択の本質とは実はそこにあるのではないか。
これから、生コンを取り巻くあらゆる不条理が一気に打破されていく。
個人的な話だが、こちら2件のコンソーシアムが採択されるに至るまで実にいろんなことが起きた。
これだけの規模のプロジェクトだ。
多くの人や企業が入り乱れ、どこかで調和し、どこかで対立していた。
産みの苦しみだったのだろうと今振り返ればそんなふうに理解できる。
人それぞれにそれぞれの主義や主張を抱えて真剣に使命を全うしている。
それらどれひとつとっても否定されるべきものではない。
そして、僕自身にも大切にしている信条があって、それは誰かに侵犯され、批判されるべきものでもない。
今回の採択に至り、「大事の前の小事」「小を捨てて大に就く」ということわざに感じ入っている。
今、僕たち産業は、どのようなあり方を模索すべきなのか。
僕も等身大の当事者として時に苛立ったし、不条理に途方に暮れたこともある。
正直、やけを起こしそうにすらなった。
その時には気づくことができなかったが、器の大きな人々の俯瞰的視点を今は理解することができるし、そんな大人物たちの懐の大きさに感動すら覚えている。
僕自身おかげさまで、本当に成長することができた。
今、建設・生コン産業は大きなうねりの中にあるようだ。
従来の枠組み(JIS A 5308や独占禁止法適応除外)が軋む中、新しい生命力が随所で産み出されている。
それら辺境の萌芽を統合する大いなるうねりとして、この度CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクトに二人の傑物が率いるコンソーシアムが採択された。
世界のコンクリートの歴史にも残りうる重大な事件だ。
そして、僕は、研究者でも大ゼネコンの役員でもなく、単なる生コンラストンマイル。
自分の身の置き所は常に、「現場」だ。
背伸びすることなく、市場と顧客が僕たちに対して期待してる何かを常に意識して。
引き続き、誇りを持って生コンを練って運び続けたい。
世の中を一新させてしまうような、イノベティブなコンクリートは、僕たちラストワンマイルが製造しなければ、絵に描いた餅なのだ。
自信を持って生コンをラストワンマイルに届けよう。
宮本充也