2022/02/28
「上も下もない、誰もが自由にシームレスにつながり合い、創発が生まれる産業空間」(週刊生コン 2022/02/28)
「JIS A 5308」「独占禁止法適応除外」。産業に秩序を与える二つのルール(規格・法律)に変化を促す動きがいよいよ活発化している兆しと読める。課題意識を持っているのはあなたや僕だけではない。会ったことも、聞いたこともない、互いに辺境で埋もれているラストワンマイル達が統合されようとしている。(週刊生コン 2022/02/28)
JIS A 5308・独占禁止法適応除外
⚫︎先週の記事1: 【JISを変えよう】「だって、野口先生や坂田さんがそうおっしゃってるんだもん」 #5
全てはひとつところにとどまり続けることはない。
絶対のマニュアルかのように思われているJIS A 5308とて例外ではない。
できたものは壊れもするし変化もする。
国際秩序も銃弾一発で最も簡単に破綻に向かうのだ。
ましてや一国のほんの一規格「レディーミクストコンクリート」を規定する程度の規格など変化して当然。
そのように考えることはできないだろうか。
毎度の共有で恐縮だが(VHSと違って劣化がないのが本当にいい笑)、この動画。
再生回数は2,300回を突破している。
順調に再生回数は伸び続けている。
RRCSでリリースされているコンテンツでは群を抜いている。
セメント新聞の記者など何もネタがないからかこの動画を特集していたくらいだ。
自分の足を使ってネタ見つけてこい、それが記者だろ、と言いたいところだが、それはさておき。
そう。
それだけ、この2人の対談は業界の耳目を集めたのだった。
「JISを変えよう」
彼らのことを「天井人」「雲の上の存在」そんなふうに囁く声を聞いたことがある。
ちなみに、僕自身、もちろん尊敬は寄せているものの、お二人とも単なる人である。
疲れたら眠くなるし、嫌なことが起きたらガッカリするし、お腹が空いたらご飯を食べる、単なる人。
では、なぜ、そんな「単なる人」を「天井人」「雲の上の存在」にしてしまったのか。
こちらもしつこいようだが、産業構造にその理由はある。
そんな構造(壁とか天井)で遮られていなければ。
たとえば、お互いなんの制約もない公園のような空間で交われば。
野口先生も、坂田さんも、あるいは監督官庁のお偉いさん、そして、僕たち生コン製造者や、業界隅々で活躍している人々は、笑顔で結びつき合うことができる。
誰もが、悩んだり喜んだり、努力や能力・才能の度合いは別としても、みんな基本は単なる人なのだ。
それがいつしか、互いを「天井人」とか「雲の上の存在」として遠ざけてしまう。
一方、ラストワンマイルは自らを「底辺」と卑屈に世を嘆くようになる。
これが、生コンクリートの安定供給を支えてきた「JIS A 5308」「独占禁止法適応除外」のセットが作り出した現実だ。
#JISを変えよう
そんな現実に変化をもたらすモメンタムが今万博を中心に発生しようとしている。
⚫︎先週の記事2: 「大津生コンクリート協同組合50周年記念事業の対談にご指名いただきました」
セットのもう一方の生コン協同組合にも変化が訪れているようだ。
これまで各地に200以上を数えるとされる生コン協同組合は低迷という辛酸を舐めてきた。
往時2億m3に到達しようとしていた生コン需要は現在1億m3をはるかに割り込む。
都市部はまだマシで、公共事業が計画されない地方部では2分の1はおろか、5分の1まで需要が減退した事例も少なくない。
そんな中、2個1(集約化)は各地で展開され、2個1ならまだしも、3個1、あるいは5個1なんて例もあるように聞く。
とりわけ、当該組合は特殊事情に巻き込まれた過去を持つ。
ただでさえ、地場産業。
加えて、JIS A 5308が規定する「90分の壁」。
その目に見えない壁に守られた特殊空間は、需要と供給という経済理論ではなく、登場人物の力関係で価格が決定される。
閉鎖的なその空間は外部から見通せないさまざまな作用が働く。
いわゆる、世間一般では到底罷り通ることのないような話が、罷り通ることになる。
「大変なことになりますよ」
生コン従事者であれば誰もが記憶に新しい事件では当該組合から逮捕者まで出たという。
つまり、あまりに高い壁で世間から隔絶されて来たため、中にいる人たちは常識やルールをつい見落としてしまったという好例なのではないだろうか。
時代や世界の要請が聞こえない高い壁で隔絶されてしまっている空間としての独占禁止法適応除外。
カルテル。
現代、自浄作用により、大津生コンクリート協同組合のように、主体的に刷新している組合が随所で発生しているようだ。
インターネットと情報革命。
20年以上前、僕がこの産業に身を投じた頃には「英語」はおろか、「インターネット」も全く関係のないこととして業界人(とりわけ、生コン工場従事者ら)に知覚されていた。
それが今や、インターネットで世界とつながり、インターネットで産業構造の壁と階層は無力化し、インターネットで生コンが売れていく。
情報は壁も階層も関係なく伝播する。
そして、人々の想い、課題意識も、今や壁と階層に隔てられることがなくなった。
まだお会いしたこともない誰かや、あなたや僕が、枠組み(組合・規格)に隔てられることなく協働できる時代となった。
これを、僕は「創発」という現象と捉えている。
特定の意図(たとえば、人体に置き換えるのであれば、頭脳。産業構造で言い換えれば、JISや独占禁止法適応除外という法律)が指図したことを従順に実行に移す辺境細胞としてのラストワンマイル(手足としての生コン工場)というあり方の終焉。
パラダイムシフト。
JISやカルテルが変化したその暁には。
上も下もない、誰もが自由にシームレスにつながり合い、創発が生まれる産業空間が待っている。
そして、そのアウトプットはあなたや、僕や、そして顔も見たことのない誰かにとっても、予想に反して、それでいて素晴らしい豊かな成果となって産業を、そして社会を潤すのだと思う。
JIS A 5308と独占禁止法適応除外における変化を僕たちはそのように受け止めたい。
現場を知らない口だけ番長の出番はない。
生コンが素晴らしいことを証明しさえすれば、「水の次に流通する」そのボリューム感で社会・環境を一変させてしまうことだろう。
宮本充也