2022/09/24
「多くの大学・研究者・ゼネコン技術者らを巻き込む一大潮流【残コン】利用の多様性について」(月刊残コン Vol.62)
ほんの短期間に「残コン」の世間のイメージは目まぐるしく変化したようだ。少なくとも近しいところでは残コンに関する「悲壮感」のようなものは全くなく、それは完全に「都市鉱山」「未利用資源」として見出されることを待つ「チャンス」に変容してしまった。(月刊残コンVol.62)
高値で売買される可能性を孕む「残コン」
残コンから回収骨材・高流動コンクリートへ
「高流動コンクリートを世に出す役割は僕たち生コン工場にある! 残コン由来《フィラ》の活用方法」
月刊残コンVol.61 でも述べたことだが、残コンからは回収骨材( V骨材・H骨材相当)が得られることが既にわかっている。
結果、最終的に残るのが写真のフィラ・微粉末だ。
回収骨材はそのまま工場で骨材として標準化すればいい。
残るフィラの用途開発が進めば、残コンは捨てられることを待つ廃棄物ではなく、用いられることで貢献する資源に変化する。
現在、高流動コンクリートに用いられ材料分離抑制のための混和材としての適応が期待されている。
方法論は今後に委ねられるが、エネルギーをかけることなくCO2と反応させCaCO3に変化させることができれば、それはそのままCCUS(付加価値)として計算される。
残コンからコンクリート製品(ブロック)を作る
【茨城】「残コンからダイレクトに縁石などコンクリート製品とV骨材を作る実験」大里ブロック工業
【注目】「解体コンクリート塊を100%利用して作るコンクリートの研究」東京大学
国際的には砂マフィアが暗躍するなど、資源枯渇が深刻化している。
恵まれている我が国では今も砂に変えることができることがわかっている残コンの大半を高額で捨てている。
「日本のコンクリート産業は莫迦なんですか?」と尋ねられても反論の余地がない。
そんな残コン由来の砂からブロックができることがわかっている。
方法論は多様だ。
まだフレッシュな状態の砂(残コン造粒処理直後)からでも、年月がたったものからでも、コンクリートブロックができる。
本件については関係者らと実用化に向けて協働が始まる。
残コン利用は多様である方がいい。
コンクリート製品に限らずため池メンテへの応用
「残コンから作った法尻固定・遮水・築堤盛土用材料の開発」神戸大学・奥村組土木興業・泰慶生コン・白石建設・光南台土建
こちらは「農業土木」という観点からすればコンクリートも関わるかもしれない。
ただ、これまでは羽金土・鋼土やベントナイトといった全く異種の材料が用いられてきたため池の築堤盛土安定を図るための遮水材として残コン利用の研究が始まっている。
個人的には生コン工場に入職して海外との交流やITの利用はまずないと思っていたが、それと同じかそれ以上に「あり得ない」コラボだ。
さらに、抑え盛土にも残コンで製造されたコンクリートブロックの適用も検討されている。
また、間詰め(まづめ)は盛土同様の特性が求められるというからには、残コンを由来とした流動化処理土の利用が望ましいかもしれない。
残コン由来の砂を用いた流動化処理土のブリーディング低減
【静岡】「多様に広がる残コン砂の用途開発。やるよ! 来週末10月1日(土)はLSSに配合される砂としての適応を探るTB会」
人と人とが交流することで、技術革新が生まれる。
技術革新はまたぞろ人と人との交流を促す。
無限ループだ。
横浜国大・細田暁教授らと共同しているプロジェクトでは現在残コン由来の砂の流動化処理土への適応検討が始まった。
先ほどの間詰めの他に、地下構造物の埋め戻しの際に問題となるブリーディング(による容積減少による隙間の発生)抑制を期待したものだ。
たった1ヶ月の短期間ではあったが、残コン周辺の事情は目まぐるしく変化した。
生コン関係者だけでなく、多くのゼネコン・大学・研究機関らがその交流に巻き込まれ新しい何かが生まれる兆しを関係者は感じている。
「臭い物には蓋」と20年前には誰も取り合ってくれなかったテーマ「残コン」が今檜舞台に登壇しようとしている。
砂漠の祈祷師の逸話
ざっとググって見たのだけれど、ソースが見つからない、いつ聞いたかも忘れてしまった逸話が「砂漠の祈祷師」の物語だ。
その祈祷師は100%雨を降らせることで評判の祈祷師だった。
結論は実に簡単で、「雨が降るまで祈り続けるだけ」というもの。
この「残コン」にしたって、「ポーラスコンクリート舗装」にしたって、生コンポータルにとってはそれに近いものを感じている。
売れるまで続ける。
見出されるまで続ける。
それ以外に、「売れる」「見出される」方法はない。
営業セミナーや心理学の類は食い散らかしてきたが、所詮「続ける」以外に方法がない。
手段や方法論なんてのは続けているうちに勝手に向こうからやってくるものであって、それらを目的にしてはならない。
毎月節目として続けている「月刊透水性コンクリート」「月刊残コン」だが、それぞれ60号を突破し(丸5年以上)メルマガとして配信されている。
「やめない」
たったそれだけのことで世間の景色が目に見えて変化する。
毎日ブログ3本以上7年更新も、「やめない」からこそ今のステージに立っている。
残コンこの1ヶ月を振り返るにこの「やめない」「続ける」の偉大さに打たれる。
誰に頼まれなくとも粛々と個人的に続けたいと思う。
宮本充也