2022/02/02
「NEDOも採択されたことだし改めて《残コンステーション》はどうでしょう?」
先般紹介したNEDO採択の興奮からおよそ1週間。いろんな解釈・分析が成り立つとは思うけれど、「残コンがカーボン利用の未利用資源として定義された」とすることもできる。「NEDOも採択されたことだし改めて残コンステーションはどうでしょう?」
【残コンステーション】公式な定義を得た残コン利用方法
⚫︎参考記事: 【350億】【NEDO】「GI基金《CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト採択》本当の意味について」(月刊残コン Vol.54)
さっき気づいたのだったが、こちらの記事がプチバズっている。
生コンポータルの読者の大半は消費ラストワンマイル(一般消費者)であるため、業界マターゴリゴリの記事はバズりにくい。
僕に一切連絡をして来ずこっそり読んでるセメント・コンクリート業界のサイレント・リーダーもいないことはないが、その数は限定的。
なので、NEDOとか、CO2とかGI基金だのを紹介する記事はおよそバズることはないと思っているし、バズらせようとすら思ってもいない。
なのに、プチバズっているのだ。
(参考:https://www.nr-mix.co.jp/ranking/)
なんと、たった5日かそこらで297回もページビューされてる。
すごい。
多分、1週間では楽勝で300は超えてくるんだろう。
それだけ、業界の耳目を集めたと言うことだ。
そして、冷静になってこのNEDO採択、とりわけ、RRCS(生コン・残コンソリューション技術研究会)会員で構成されているコンソーシアムのプロジェクト「CO2を高度利用したCARBON POOLコンクリートの開発と舗装および構造物への実装」はつまりは、「残コンが公の定義を獲得した」と言い換えることができるのだと思う。
「生コン工場は飽和水酸化カルシウムの泉」
このように表現されたのは東京大学の石田哲也教授だ。
目から鱗の表現だと感動した。
化学に明るくない僕だって知っている、Ca(OH)2 + CO2 = CaCO3 + 2H20という化学式。
生コンは強アルカリで、Ca(OH)2がたっぷり含まれている。
一般に、構造物としてのコンクリートにおいては上記化学式は都合の悪い現象とされている。
上記化学式はつまり、強アルカリ(12.5)が中性域(pH9とか、多分...)に変化してしまうことを意味しているから。
専門家ならわかるように、中性化はそのまま鉄筋を覆っている不動態皮膜(水や酸素から守っている)の破壊を意味する。
内部鉄筋の発錆(はっせい)、膨張により、構造物が致命的な損傷を被ってしまうからだ。
一方、残コン。
はい。
いくらでも、中性化大歓迎でっせ、ということになる。
消石灰(Ca(OH)2)が生石灰(CaCO3)に変化するだけなのだ。
ご存じ、炭酸カルシウムって食品にも用いられるような、非常に汎用性の高い物質になるってこと。
用途はいくらでも挙げられるしそれは無論、「生コンクリートに配合される混和材」としても利用可能。
つまり、生コン工場における残コン(あるいは、スラッジ、上澄水)は全て炭酸カルシウムを製造するための原料として利用可能ってこと。
10年前に実装されていた残コンステーションはいわば炭酸カルシウム製造マシン
元々当社生コンポータル(長岡生コンクリート)においては残コンは原料だった。
上記プロセスで改質された粒状物質は民間工事でリサイクル砕石相当として利用が進んでいた。
あるいは、ECON-NEO(再生骨材コンクリート)や最近ではオワコン(造粒ポーラスコンクリート)の原材料として利用が進んでいる。
その粒状物質はそのライフサイクルの過程で勝手にCO2と反応、つまりは、炭酸カルシウム化してしまう。
(NEDOで採択されたプロジェクトではその反応を促進するようにされている)
つまり、残コンステーションはそのCO2利用(固定)のインフラ、受け皿たり得る、ということがここでわかる。
飽和水酸化カルシウム溶液の泉「生コン工場」に実装される残コンステーションはCO2利用ハブとすることができるのだ。
はてさて、ここに至るまで、実に多くの人々との交流があった。
残コンを商売のネタだと認識し金の匂いに近づいてきた多くの人々(福井のポンプ屋とか全圧連を私物化しようとしてたやつとか)もいたし、もちろん真剣にその問題を解消すべく努力されていた方々もいた。
僕たちは常に篩にかけられているんだと思う。
まるで、骨材のように。
そして、本物、強い信念・動機づけに基づいて活動している人だけが、残るんだと思う。
それは、残コンに限らず、透水性コンクリートなどでも実際経験してきたことだ。
偽物はいつしかいなくなる。
そして、篩にかけられても残った少数の人たちとの長年の交流は上記のような大きい変革を生み出すのだと思う。
時間はそんなにない。
今後近づいてくるだろう有象無象を相手にする時間は当然ない。
誰と組むか、ではなく、自分の信念・信条(僕は「内側からの創造的衝動」と呼んでいる)に従って、群れず、しがらむことなく、進んでいきたい。
日本中の生コン工場に残コンステーション(あるいは、似たようなもの)が実装され、各地でCO2が地産地消される。
そんな世界がまさに、「大地を削らない、汚さない、蓋しない、循環するコンクリート」そのものだと思うのだ。
宮本充也