2021/11/26
「生コンスラッジの先端的活用事例の見学会開催」白石建設
昨日(2021/11/25)は岡山でスラッジケーキの粒状間摩擦(パウダー化)の施設見学会が執り行われた。誰にとっても厄介者のスラッジケーキが安定した「砂」となるその技術に注目が集まる。
スラッジ粒状間摩擦
スラッジ粒状間摩擦設備がこれ。
いわゆる、単なる、トロンメルだ。
ここに圧搾されたスラッジケーキ(翌日以降)を放り込む。
くるくる回転するふるいの中でスラッジケーキ同士が擦れ合い粒状になり、最終的には砂状に変質する。
⚫︎参考記事1: 《コラム》「厄介者【スラッジケーキ】はCO2を固定化する媒介として今後注目される」
⚫︎参考記事2: 《コラム》「厄介者【スラッジケーキ】はCO2を固定化する媒介として今後注目される」その2
昨年の12月に僕はコンクリートの「中性化」という現象がそのままズバリCO2利用につながるという理屈を理解していた。
⚫︎参考記事3: 《コラム》「透水性コンクリートの本当の価値は水を透すことではないのかも知れない」
スラッジケーキはなぜ困るのか?
それは、圧搾された高含水の状態が持続するから、というのが答えとなる。
セメント粒子は水和反応に必要な水を消費し尽くしてc-s-hの結晶体として安定しない。
いつまでも水分の供給が継続するため、コンクリートのような強度を発現しない。
不安定であることはそのまま六価クロム溶出の懸念が生じる。
だから、最終処分場にて埋め立てるより他手段がない。
だから、困る。
そのスラッジだがトロンメルの中で擦れ合い砂粒状になることで表面積が爆増し高含水状態が解消され水和反応が収まり、安定化する。
だから、シルトや粘土と違って、砂のように安定した性状となる。
六価クロムも溶出しない。
実証は今後の研究に委ねられることとなるが、表面積が膨大であるということはポーラスコンクリートと同様の状態であることからも、急速な中性化、つまりは、CO2の固定化が期待される。
こちらが成果物。
ザ・砂。
そもそも、内容はセメント粒子と骨材の微粒分、そして、砂、となっているので、残コン全般に言えるようにトレーサビリティは明々白々。
大半を占めるCa(OH)2は待機中のCO2と反応してCaCO3炭酸カルシウムに変化するだろう。
炭酸カルシウムは先般鹿島坂田昇氏と東大野口貴文教授の対談でも示されたように高流動コンクリートの混和材他用途は無限だ。
無論、そのまま、「砂」として菅まわりの保護砂などの用途で販売もできるだろうし、実際にそのように白石建設では事業が成り立っている。
現場で生み出された副産物としての「残コン」ないしは「スラッジケーキ」は地産地消、その場で生コン工場の原料(未利用資源)として新たな役割を与えられる。
CO2は悪者ではなく、資源として循環に回る。
誰もが知る樹木や草花が光合成に伴いCO2を吸収するように、日本中、世界中、どこにでもある生コン工場はCO2を吸収する。
そして、新たな資源を生み出す。
それは、大地を削らない、汚していない、蓋もしない、インフラ資材として還元される。
永遠にループする。
生コンクリート産業の中で循環する、完全クローズドループだ。
毒性を排出しない。
「コンクリートから人へ」などとかく悪者として位置付けられてきたコンクリート産業の活路。
白石建設が生み出したこの技術に僕はコンクリートの未来を見出している。
素晴らしい見学会誠にありがとうございました。
「大地を削らない、汚さない、蓋しない、循環するコンクリート」
理想が少しずつ形になっていく。
そのためにも「出口」。
当社が16年来取り組んでいる透水性コンクリート(ポーラスコンクリート)など当面はJIS外生コンクリート、或いは舗装コンクリートがその主戦場となるようだ。
宮本充也