2022/01/28
「月に生コンを運ぶ? 《キングクリムゾン》 生コン新世代への挑戦」
世界トップクラスの化学混和剤メーカーの上級研究員フェラーリ・ジョルジオ博士とのセッションはいつもながらに夢が広がるひとときだ。川越市渋谷建材の大曽根工場長が開発した凝結遅延剤「キングクリムゾン」を取り巻く人々の動きは活発化する。
キングクリムゾン
キングクリムゾン × MAPEI ムーンショットコンクリート
⚫︎参考:超凝結遅延剤「キングクリムゾン」関連記事
MAPEI上級研究員フェラーリ・ジョルジオ博士は文系の僕にとっての化学の先生。
複雑な化学反応のあれこれをわかりやすく噛み砕いて教えてくれる。
英語の勉強にもなった笑。
そんな恩人とのひと時はいつも胸躍る時間だ。
夢が広がっていく。
おいくつになっても少年のように可能性の虜になっているフェラーリ・ジョルジオ博士は本当にかっこいい。
とても幸せなんだろうと思う。
これまでにも凝結遅延剤は当然のことながらあるにはあった。
BASF、SIKA、MAPEIといった業界の巨人たちからそれぞれリリースされてきたそれらには限界があった。
時間的な限度もそうだし、コントロールがなかなか難しい。
「これまでに50日以上も凝結を遅らせることに成功した混和剤を見たことありますか?」
僕の質問に、「今まで見たことがない」と答える。
「最終強度はきちんと発現しますか?」
さすが長年化学混和剤の開発に携わってきた御仁は重点をすぐに指摘する。
大曽根工場長によれば、キングクリムゾンの添加率(セメントに対して〜〜%)を変えれば自由に遅延期間を設定することができる。
ただし、遅延期間が長じるほどに最終強度が影響を受ける。
長くなればなるほど、硬化不良と言っていい現象が起きる。
だから、キングクリムゾンは完成した製品ということではない。
キングクリムゾン・レクイエム(完全体)になるためには「何か」が必要になる。
その「何か」を以前MAPEIと長岡生コンクリートがRe-con ZEROを生み出したように開発する。
「もしも、50日、100日、自由に遅延時間を設定することができて、打設前に【何か】を添加すれば最終強度も問題なく発現することになれば。人類は月にだって、誰もいない砂漠にだって、好きな場所に生コンクリートを持ち込むことができる。それは、生コンクリートの運命を変える、次世代への移行を意味する」
宇宙食。
いくらでも保存ができて、好きな時に消費できる。
そんな、生コンクリート。
時が経てば「何事もなかったかのように」硬化する。
そんな生コンの運命が変化する。
大量生産し、大量輸送し、大量打設する。
「1時間半の壁」や、「独占禁止法適応除外」といった従来の制約から解き放たれる。
生コンの運命が変化すれば、全ての前提が変化する。
無論、これまでの経験から言っても、そう易々と物事が成就することはない。
ただ、僕が最も大切だと思っているのは、ジョルジオさんのように可能性を夢見て没頭すること。
最も幸せなあり方なんじゃないか。
仕事とは成果のみを追求するもんじゃない。
仕事を通してどれだけ熱中していられるか、没頭していられるか、いつしか寝食も忘れちゃってたみたいな、そんな体験。
それこそが仕事の醍醐味なんだと思う。
そんな仕事は全て成果を結ぶとは限らないけれど、それでも幸せであることには違いないんじゃないだろうか。
組織ルールや上司の監視にがんじがらめになって自由の翼を完全に奪われた仕事からはイノベーションは絶対に生まれない。
ほんの30分くらいのセッションだったけど、渋谷建材 × MAPEI × 長岡生コンクリートの共同が始まることになった。
コンクリートの運命を変える素材。
キングクリムゾン。
キングクリムゾン・レクイエムへさらに進化するべく。
クレイジーな共同が始まった。
宮本充也