2022/03/22
《コラム》「他産業の副産物【廃治具ボード】を眺めていて改めて気付かされたこと」
知人の紹介で意外な副産物の存在を知ることになる。残コンもそうだが、業界・分野が異なれば、当たり前は当たり前ではなくなる。ワイヤーハーネスを製造する際に発生する副産物「廃治具ボード」の可能性と残コンについて。
知られざる副産物
廃治具ボードというワイヤーハーネスを製作する際に発生する副産物。
イノベーションの鍵は壁と階層を打ち破りシームレスなプラットフォームを構築すること
建築 or 土木 と二元論で語ることなく、舗装、さらには最近見つけた市場ですが、防草など、コンクリートが活躍しうるフィールドはまだまだあるように感じてます。
土木・建築で発生した残コンを土木建築だけに循環させようとするのではないありかたも模索できればと僕はこのプロジェクトに期待しています。
「水の次に流通する材料」と言われるコンクリート視点で考えると、もしかしたら僕たちの今の視点は狭すぎるのかもしれません。
さまざまな立場が交錯するこうしたシームレスな議論を土台に理想的なコンクリート産業が自然に生成されていくのだと思うと興奮がおさまりません。(LINEグループ「残コンさんいらっしゃい!」より)
⚫︎参考記事: #JISを変えよう 「万博に使用する生コンクリートの種類を少なくしよう」船尾サンコン
現在参画している「大阪万博ゼロプロジェクト」では学びが大きい。
これまで、壁・階層で互いに分断されてきたそれぞれがただ単にシームレスな空間に集うだけで勝手にアイデアが生まれプロジェクトは動き出す。
それに近い感覚を今回抱いた。
ワイヤーハーネス。
(引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000608.000059861.html)
ワイヤーハーネス(英: Wire Harness)あるいはケーブルハーネス(英: Cable Harness)は、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線を束にして集合部品(ASSY)としたものである。 自動車の車内配線など、多くの電気配線を必要とする多様な機械装置で用いられている。
その製造工程において冒頭の廃治具ボードと呼ばれる使用済みで穴の穿たれたコンパネが発生する。
その数なんと月間1トン!(1000枚以上)。
年間ではなく、月間である。
訪ねた工場はまだマシで、他の工場ではなんと月間5トンも発生するそうだ。
それらは再利用の有効な手立てが確立されておらず、木チップ(燃料)にする業者へ処分を依頼しているという。
「CO2バンバンたいてますやん」である。
一般に、木材はサステナブルなマテリアルということで、兎角コンクリートを槍玉に上げて自身の有用性を唱えがち。
「CO2を吸収して成長するんだお!すごいでひょ!」と、唱えがち。
でも、結局、燃料になってCO2吐き出してますやん。
せっかく光合成に利用するのにCO2固定化したのにねえ。
まるで、コンクリートを作るのに石灰岩からCO2を大量に発生させるように。
似たようなもんじゃん、木材!
と、この辺で、普段の鬱憤を晴らすのはさておき、ここでも鍵はやっぱり「お前のやり方か、俺のやり方か」といった二元論・二項対立の打破がイノベーションには絶対必須だという気づきを強調したい。
例えば、ワイヤーハーネスを作る、というプロセスだけに固執していたらきっと循環は生まれないことだろう。
「ワイヤーハーネスの廃材はワイヤーハーネスの分野で循環させる」
そんなの、土台無理な話だ。
一方、「製鉄の際に発生する高炉スラグを他産業セメントの原料として再利用する」といったような異分野における循環。
壁・階層を取っ払うチャレンジ。
事例としては小さなものかもしれないけれど、まさかワイヤーハーネスの工程で発生した副産物が駅の待合室の床材や什器に利用されるなんて素敵な循環ではないか。
二項対立や、壁と階層(分断)を前提にしていたら絶対に生まれないアイデアだと思う。
⚫︎参考記事: 「建築、土木と心中する必要はない。社会のあらゆるニーズに関わり合いを持つ生コン産業について」(週刊生コン 2022/03/21)
「生コンの副産物は絶対に生コン(あるいは建設資材)にしなければならない」と思っているうちは循環が生まれないってことだ。
他の産業との間にある壁を取っ払おう。
そんな示唆を含んでいるのだと思う。
友人の石井真人(現職の三島市議会議員)に紹介されて訪ねた工場や近隣の駅舎やコミュニティスペースでは普段会話をしないような方々と1時間強たっぷりと話し合いをすることができた。
生コンという視座からワイヤーハーネスの副産物廃治具ボードを眺める。
きっとワイヤーハーネスという視座ではとても想像できなかった世界が展開しているのだろう。
つまり、僕たち副産物「残コン」に求められことはそういうことなんだと思う。
殻に閉じこもらない。
世間一般衆目に晒す。
「残コンって問題があるんですよ!」
なるべく多くの人々の目に晒す。
壁と階層を取り払う。
もしかすると、そのことだけでもいろんなアイデアや実践が生まれて、いつの間にか残コンは問題から機会に変貌してしまうのかもしれない。
宮本充也