2022/09/02
【解説】「豆板コンで残コン利用 コンクリートの常識を逆手に」宮城工組・日本大学
セメント新聞で発表された豆コンは日本大学岩城教授ご指導のもと宮崎県工業組合らによって開発された脱炭素コンクリート。表面積が大きいためそれだけ中性化(CO2固定)が進むことで環境負荷低減と残コンを利用することで資源循環性能を満足している。
残コン由来【豆コン】
豆板って何?
https://concrete-mc.jp/peanut-brittle/
ジャンカと呼ばれたりもするけど要は施工不良が豆板である。
建設・生コン業界で言えば、施工不良。
つまり、ミス。
怒られるやつ。
なるべく起こさないように現場監督さんも生コン技術者も気をつけるやつ。
中性化もそうだったけどミスを逆手にとる
一昨年に当日の首相から発せられた2050年カーボンニュートラルでコンクリート技術者の何人かが気づいたこと。
コンクリートにとって劣化原因でしかない中性化は別の見方をすればそのまま脱炭素・CO2固定とすることができる。
これまで悪だったことが突然善に変わる。
物事は味方によって何にでも変化する。
変えるべきは対象ではなくそれを眺める自分自身。
ここ数年僕も同様の体験を重ねてきたが、豆コンも言ってみればそのような技術開発かもしれない。
豆板ができればめくじら立てるもん、と眺めていたコンクリートを別の視点から眺める。
表面積が増えればそれだけCO2とふれあう面積も増える。
あたかも僕がポーラスコンクリートを「水を透す」ではなく「空気(CO2)も遠す」と眺めるようになったのと近い。
膨大な面積がCO2とふれあい、幕厚も1mm未満であるはずだから短期間でCO2を吸収固定して水酸化カルシウムは全て炭酸カルシウムに変化する。
c-s-hままだから強度は変わらないばかりかいくつかの研究では強度が上がるとされている。
気になる豆コンの用途は?
残コン由来であるからカーボンゼロが出発点だ。
そこから中性化分をカーボンネガティブと計算することができる、このコンクリートの用途に関して開発者らはコンクリートブロックを想定しているようだ。
工業組合が主導しているから公共事業などで仮設資材として土留やカウンターウェイトなどに有効利用できたらいいだろう。
豆板コンクリートと言っても完全にポーラス、連続空隙が全体に及んでいると言うこともないのだろう。
ある程度施工管理を行えば重量保証もされるだろう。
そう考えれば、我が国ではRRCSらや泰慶生コンらが取り組んでいる統一規格のブロックの取り組みのように、組合内で発生する残コンを全て脱炭素製品に変換して公共事業の仮説資材として提供する。
そうなればリアル残コン再利用の完成だ。
これは理屈としては簡単に述べることができるのだが実際に形にすることが重要。
この手の技術開発はごまんと生まれそれらは特許こそ取得するも実際に日の目を浴びる、つまり、流通に乗るというのは万に一つが現実。
僕としては「残コン」を生涯のテーマとして取り組んでいるだけに同工業組合らの今後に強く期待したい。
また、記事にも紹介されているが、先日訪ねた日本大学の岩城先生も取り組まれておられるようなので、その意味でも今後がとても気になる記事だった。
残コンを造粒させてブロック作ったらどう?
さて、他所様の技術紹介だけでは芸がないので、当社らが推進するポーラスコンクリート「オワコン」の話題。
写真は大阪チャキチャキの生コン工場久保田建材店に設置されてあるポーラスコンクリートの擁壁。
なんでも、この擁壁は吸音材としての役割が期待されているようだ。
例えば当社らで開発に携わったRe-con ZERO EVOなど造粒材を用いて残コンをポーラス状にしたものでブロックを作成する。
強度は期待できないだろうが、重量を要求される仮設資材としては申し分なかろう。
また、散水などして保水させることにより環境温度を下げる、またはその表面積を同じく利用して「脱炭素」を掲げることができるのではないか。
こう言うのは言うだけ番長になってはいけなくて、共感くださる方々と実際に形にしてなんぼだろう。
RRCSにでも提案してみようかしらん。
脱炭素には賛否両論もあり手放しで賞賛できるものではないにしても何かを起こすきっかけには利用しうるモメンタムである。
GI基金に採択されたRRCSらの取り組みもまさに「残コン」に世間の注目を集めるには格好の機会となった。
20年以上前のことになるが入職当時の若かりし僕を愕然とさせた「残コン」は今やリスクではなく世界を一変させる「チャンス」に変容しようとしている。
多くの研究者や技術者、実務者が「残コン」に流入し、脱炭素やSDGsを契機として数多くのイノベーションが起こすことで完全クローズドループ、資源循環型社会の騎手として斜陽産業コンクリート産業が復興するのかもしれない。
宮本充也