2022/09/23
「高流動コンクリートを世に出す役割は僕たち生コン工場にある! 残コン由来《フィラ》の活用方法」
すごい先生、すごい技術者はみんな「生コン工場と仲良し」。そんなことに気づいたのは近しい先生や技術者のことを思い返していたときだ。所詮、生コン工場が練らなければ、どんなにすごい技術も「絵に描いた餅」。そう考えると俄然「生コン屋」という職業が誇らしく思えてくる。
生コン工場が発信する高流動コンクリート
残コンから抽出された石粉
《残コン売ってください》「クローズドループ・資源循環へ向かう最強の未利用資源【残コン】争奪戦が始まる」#8
残コンステーションで生成された造粒物が硬化した後にインパクトクラッシャにかけて粗骨材・砂を回収する過程で発生する粉塵はほぼコンクリートと同等の成分。
つまり、Ca(OH)2を豊富に含んでいる。
Ca(OH)2 は放っておいても待機中の CO2 と反応し CaCO3(炭酸カルシウム) に変化する。
つまり、高流動コンクリートの材料分離抵抗性を担保するマテリアル「石粉」と成分的にはまるっきり同じになるってことか。
石粉として高流動コンクリートに配合する
動画でも鹿島の坂田昇さんが触れていらっしゃるが高流動コンクリートはとっても柔らかく型枠の中を自己充填する。
そのため、材料分離が懸念されるため、フィラ・石粉が従来より用いられている。
大成建設さんのなんちゃって脱炭素が日経新聞報道で報道されるまでもなく、30年前に鹿島の坂田さんらによって確立されている手垢のついた技術だ。
そんな石粉に残コンから抽出されたフィラが使えないだろうか?
「あり、かも。今度シラフの時にきちんと聞かせてよ」
こう指摘したのは、坂田さんが座長となって不定期で行われている飲み会の参加者でいらっしゃる東京大学の石田哲也先生だ。
高橋カーテンウォール工業の高橋社長のご紹介で数年来親しくさせていただいている。
高濃度CO2で密閉された空間で補修されたフィラを用いる
https://saiseki-hokkaitihon.c.ooco.jp/top/saiseki/kankyoutaisaku.htm
方法論はこれからに委ねられるが、このCO2を吸収固定させたこの粉をCCUSとすることもできよう。
SDGs大好きおじさんからすれば垂涎の的「脱炭素」混和材になるわけだ。
ちょうどその飲み会に参加されている方々の多くは脱炭素コンクリートの開発に携わっている方も多い。
参考:https://www.kajima.co.jp/news/press/202201/28c1-j.htm
もしもこの着想、「残コン由来のフィラがCO2を固定しさらに高流動コンクリートに大量に用いられる」が実現したら。
RRCSらでも取り組んでいる残コンを高度利用した脱炭素コンクリート(CPコンクリート)にもつながる技術開発になるのではないか。
フルオープン・爆速で変化し続けるこの僕宮本充也のサイドエフェクトがそう言っているから間違いないだろう。
生コンに混和剤・材を現場で後添!
例えば、オコシ剤(オコシコン原料)やレオパックが梱包されているような水溶性袋(投入後自然に溶けてなくなっちゃう袋)でそのフィラを梱包する。
生コン工場はいわゆる通常の生コン(あるいは再生骨材コンクリートなどリサイクルコンクリート)を製造して出荷する。
現場に到着し伝票が交付され生コン工場の管理限界の外に生コンが置かれる。
そしたら今度は荷受人(ゼネコン・工務店など施工者)の責任範囲で、HF70(チューポール)やマスターグレニウム6510(ポゾリス)をふんだんに後添加する。
材料分離を起こすほどシャバシャバにやわらか〜く、生コンを蕩けさせる。
その後、水溶性袋に梱包されたフィラの出番である。
ボコボコに手投入する。
そんでもって攪拌する。
高流動コンクリートのいっちょ上がりである。
建築でも土木でもない 生コン工場の強み【現場実装】
https://www.niwakobo.jp/blog/toyama_blog/domakonnndasetu.html
「長岡生コンさんのすごいところは、今すぐプラントで生コン練っちゃえること」
その場にいらした横浜国立大学の細田暁先生の指摘。
そうなのだ。
生コン屋さんは日に大量の生コンクリートを複数件の建設現場に運んでいる。
毎日だ。
そして、それらはすべてJIS品というわけでもなく、例えば写真の土間コンのようにJIS外生コンでもOKな分野(土間コンとか)にも届けられている。
大学など研究機関では試験練りってなると数日、数週間前から準備が始まって、ようやくその日を迎える。
当社ら生コン工場は、今すぐ、直ちに、たった今、生コンを練って運ぶことができるのだ。
それが、強みだ。
残コンから抽出されCO2を吸わせたフィラを高流動コンクリートの混和材としてすぐに実装できるのは他でもない僕たち生コン工場だ。
粒度管理の検討
高流動コンクリートに知見の浅い僕は知らなかったが、石田先生によればどうやら石粉・フィラとして適応する場合、その粒度分布が重要だという。
果たして抽出されたフィラの粒度分布がとても使えない分布だったとしたら。
石田先生:「あり。それ、あり」
即答。
ありのようだ笑。
というわけで、鉄は冷めないうちに、ってことでブログ書き終わったらLINEで先生の都合を聞いてみよっと。
今度こそ間違いなく本郷にいこっと。
ついでに野口先生も表敬訪問しよっと。
適応場所の候補はドットコン!
《高流動コンクリート用後添フィラー》「残コンからV粗骨材を抜いた後に残る【砂】無限の用途開発」
適応箇所として最も自然な候補はPUMP MANらが展開する「ドットコン」である。
なぜって、高流動コンクリートの場合間違いなく水勾配をつけることができないからだ。
だが、ドットコンならば水勾配も不要で真っ平らに仕上がっても問題がない。
しかも、駐車場など土間コンであるからしてJISいらない。
本当に理想的な適応箇所となる。
細田先生も関わっておられるし。
1986年岡村甫先生が提唱された高流動コンクリート
https://www.jstage.jst.go.jp/article/coj/50/6/50_515/_pdf
お目にかかったことはないが岡村先生という方が今から30年以上前に提唱され当時の坂田昇さんが感銘を受けた技術が高流動コンクリートだという。
確かに人手不足の現代においてこうした技術分野が確立されることは求められている。
そして、再生骨材コンクリート同調の問いに突き当たる。
数十年の歴史があるのにいまだに世界の景色を変えられていないのはなぜ?
この問いが重要。
それは、僕たち生コン工場が、ついていかなかったから、だ。
そっぽを向いたから、だ。
一方、坂田さんが座長を務められている飲み会に参加する先生方は岩城一郎先生もそうだがみんな生コン工場と仲良し。
【解説】「豆板コンで残コン利用 コンクリートの常識を逆手に」宮城工組・日本大学
あ、そういえば、大恩人野口貴文先生からしてそうだ。
なるほど、いわゆる、一流と呼ばれる先生は現場・現実・現物、つまりコンクリート製造で言えば生コン工場に寄り添う姿勢に共通項を見出すことができる。
あ、そういえば、巨人・長瀧重義先生もそうだった。
あ、すごい。
すごい先生ってのはみんな生コン屋さんを尊重するんだ。
ゼネコンの巨人・坂田昇さんなんて自らのことを「生コン屋」と名乗るほどだ。
すごいなあ。
そんなすごい人たちのすごい研究も、やっぱり所詮は僕達生コン工場が練らなければ「当たり前」にならない。
つまり、世界の景色を規定するのは生コン工場にかかっているのだ。
そう考えるとが前「生コン」という仕事が誇らしく思えてくる。
僕は本当に本当に人に恵まれている。
共に仕事をする人たちは本当に素晴らしい人ばかりだ。
そんな素晴らしい人と一緒にいればきっと変えられるだろう。
理想の建設・コンクリートを目指して。
先輩や仲間たちと共に進むコンクリートがたまらなく楽しい。
宮本充也