2022/07/20
【解説】「残コン」問題を放置すれば違反の生コン利用は再び起きる(WEDGE REPORT)
川崎市などでJIS違反の「生コン」が使用された建物があることが判明した。違反を正すことは必要だが「残コン」を放置したままではこの問題は解決しない。(Wedge 8月号12頁より引用)
勧善懲悪では済まない「残コン」
「やったことは間違いです。罰を与えます」
そこまでは正しい。
で、新聞やワイドショーで騒ぎ立てる、それもいいだろう。
ただ、人の噂は75日、飽きたから次の話題、ってことになるなら被害者は僕たち生コン工場だ。
普段乗り付けないグリーン車に乗って西明石に向かっている理由は本日がWedge発売日であり取材を受けた記事が発表される日だから。
「残コン」を放置すれば違反の生コン利用は再び起きる
まさに僕たち生コン工場が主張したいことを1行で示している。
編集部・友森記者一流の筆力に舌を巻く。
冒頭は先日メディアを賑わせた小島建材店の経緯について説明されている。
⚫︎参考記事:#JISを作ろう 「小島建材店のニュースは誰かが責任を取っておしまいにしてはならない」(月刊残コン Vol.59)
いい加減、「残コン」問題に正面から向き合え
僕は個人的に残コンを取り巻く現実は「建設・コンクリート公然のパワハラ」だと思っている。
言葉にすると過激に映るかもしれないが、行政(国土交通省・経済産業省・環境省)は見てみぬふりで民間のパワーバランスに委ねられている。
ゼネコン・工務店は「臭いものには蓋」の姿勢で「協力業者」とは名ばかりの下請け・弱者に押し付けている。
押し付けられた生コン工場や圧送事業者は泣く泣く誰かの残した残飯を背負わされ残業や過重労働に俯く。
文中にはコンクリート主任技士・診断士で、各種コンサルティング、資格取得指導を行うJICの森政伸社長の鋭い洞察が紹介されている。
「氷山の一角」
この言葉を持ち出すと気色ばむ向きのあることを承知で訴えたい。
伝えねば、伝わらない。
伝わらなければ、知られない。
知られていないことは、存在していないのと同じこと。
建設・コンクリートの不得手な情報発信。
コーポレートイメージを無闇に美しくするテレビcmには余念がない一方、産業全体の根本的な問題からは目を背ける業界慣習。
生コン・残コンソリューション技術研究会(RRCS)の活動
弱者の側に立ち、誰かに皺寄せるあり方は続かない。
代表理事を務められている野口貴文東京大学大学院教授が、僕たち生コン製造・圧送の立場に寄り添いRRCSを発足させたのは2020年。
今年で丸2年を迎える残コン問題を取り扱う社団法人だ。
来週月曜日にはいよいよ小池百合子東京都知事との対談がリリースされるなど、残コン・資源循環などに関する情報発信を活発化させている。
僕自身もこの20年以上「残コン」に関する不思議について田舎の生コン屋だてらに情報発信を続けている。
生コンに携わる全ての人たちはその課題に対して少なからず発信してきた。
経済産業省、国交省、そして業界団体などからは、「残コン」問題の解決に向けて、積極的な姿勢は見えてこないままだ
記事はこのように結ばれている。
業界団体とはZENNAMAのことだ。
どこか他人事のような反応だったという。
それもそのはず、彼らはきっと生コンを触ったことはないだろう。
ましてや、残コンなどは城下町を見下ろす殿様や家来たちには見えるはずもない。
剰え取材には「小島建材店がアウト工場だったからこの様なけしからん事態が発生した。組合員では絶対にそんなことは起きない」と嘯いているようだ。
それが、業界団体の姿勢だ。
やれやれだ。
「残コン」問題を放置すれば違反の生コン利用は再び起きる
勧善懲悪。
悪人が成敗されて大団円。
めでたしめでたし。
それがいわゆる「大人」のやり方なのだろうか。
もちろん、やったことは悪い。
弁明の余地はない。
ただ、そうなってしまった経緯への想像力がなければ、この世界はきっとアップデートされることなく今以上に人々を明るくすることはないだろう。
目を背けない。
直視する。
RRCS(生コン・残コンソリューション技術研究会)とそれを取り巻く業界関係者の自主性・主体性を期待しつつも、僕はこれまで通り、自分ができることをひたすら継続するのみだ。
WEDGEが残コン問題を継続的に取り上げてくださることには感謝しかない。
宮本充也