2024/06/29
「そりゃ、コンクリートぞな、もし」コンクリート工学年次大会2024(松山) 後編
コンクリート一流のアスリートたちが集う年1の大会コンクリート工学会年次大会のレポート後編はCO2固定技術(CCU)を中心に多数の優れた発表をご紹介。
「そりゃ、コンクリートぞな、もし」 後編
レジェンド長瀧先生から始まる3日目
シャトルバスに乗り込んだらなんと業界のレジェンド長瀧重義先生がいらしたので「お隣いいですか?」(「よく大先生にそんなこと言えますよね汗」は大阪兵庫の船尾さんコメント)ずけずけと申し出る。厚かましいついでに「先生、ぜひ、JOISのYouTubeに出演お願いします」など会場までおよそ40分近況報告を含めた楽しい朝1から贅沢なレジェンドによるコンクリート個人レクチャを楽しむことができました。
スラッジ粉体は CO2を250kg/t固定可能(東京都立大学)
CCU「残コナ」として宮本さんも大変興味関心のあるスラッジ微粒分へのCO2固定の最大値は250kg/t程度ということを教えてもらいました。
炭酸カリウムを利用したCO2固定(安藤間)
人体への影響が懸念されるK2CO3の取り扱い方法や、得るために多大な費用やエネルギーが想定されるK2CO3・KOHの応用、またコンクリート中に残留することでアルカリシリカ反応など劣化が問題となりその回収方法がまだ確立されていないことなど、常識的に考えてとても実用化できそうもなさそうなテーマに果敢に挑戦する安藤間さんの発表(CPコンクリート)。
繊維により透気性を向上させたコンクリート構造物の研究(安藤間)
さらに、アルミ繊維を配合することでコンクリートにCO2の入り口を確保し効率よくK2CO3を用いてコンクリートにCO2を固定する技術も安藤間さんから。前述の課題に加えてコンクリート強度や耐久性の確保など常識的に考えれば一見不可能とも思われる難題に果敢に挑戦している様子が発表された(CPコンクリート)。
CO2固定スラリーセメント(太平洋セメント)
クリンカー製造の過程で発生するCO2をそのままセメントスラリーに撹拌し炭酸化させることでなんと326kg/tものCO2固定が可能であり、さらにセメント内割置換で20%程度までならコンクリート各種性状や性能に大きな影響を及ぼさないという非常に興味深い内容はセメント国内最大手太平洋セメントさんから。
今後この素晴らしい技術が実装を果たす上で生コン工場としてできることがあればなんでもおっしゃってくださいと発表者に詰め寄った宮本さん。
上澄水由来の軽質炭酸カルシウムCO2固定量は440kg/t(ポゾリスソリューションズ)
残コンを処理(洗浄)した際などに得られる上澄水(飽和水酸化カルシウム溶液)と二酸化炭素を反応させることで得られる軽質炭酸カルシウムの化学式はCa(OH)2+CO2→CaCO3。CaCO3の分子量は(Ca(40)+C(12)+O(16)×3=)100に対してCO2の分子量は(C(12)+O(16)×2=)44であるため、CCU混和材として適用する軽質炭酸カルシウムのCO2固定量は44/100つまり440kg/tと圧倒的なCO2固定量を誇りながらもロットごとのばらつきや過剰になりがちな混和剤使用量など今後の課題解決についての貴重な講演がポゾリスソリューションズの山宮さんから発表された。
ブルーインフラへの挑戦(東北大学・宮城大学)
前編で紹介した明石高専らの植生基盤と同様コンクリートを藻場として有効利用する試みについて東北大学・宮城大学らから発表があった。これ、たとえば造粒ポーラスコンクリートを適用することで水陸両用のCN植生基盤コンクリートへの道が開かれるのではないかという着想を得ることができました。
JOIS本格始動へ!
帰りは白石建設(岡山)が用立ててくださったバスに乗り込み本格始動をはじめるJOISについて大阪兵庫のサンコンさん(船尾さん)や武南さんとの激論は深夜2時にまで及びました汗。
「コンクリートをもっと身近に」
そして僕たちコンクリートの実務家らの役割は実際にそうした基礎技術を用いたコンクリートで世界の景色を変えること、です。その意味では生コン屋さんの学会への参加がほとんど見られなかったのは大きな問題と僕たちは認識しています。「伝える」情報発信で、一人でも多くのコンクリート実務家の努力に光を当てることができたら幸甚ですっ。
オワッコーン‼︎
作者・宮本充也
残コンステーションによる地域資源循環・脱炭素フロー
未利用資源「残コン」の高度利用を地域や組合単位で取り組むことで資源循環・脱炭素といった地域の課題を打破しつつ新たな付加価値(富)を創造する。地域や生コン組合主導の残コンステーションという提案。
Before:従来、建設現場で余剰となった生コンクリート(残コン)の大半は資源循環されることなく現地の中間処理業者らの手に委ねられあるいは最終処分場で埋め立て処分となっている。
After:一方、残コンステーションを実装した地域(生コン組合)では未利用資源として再定義され、廃棄されることなくフローチャートのように循環し、その過程で残コンやスラッジ水は「アルカリ刺激効果」を有し、CCU(Carbon Capture Utilization)材料としても脱炭素コンクリート(CNコンクリート)に貢献しうるマテリアルとして地域内で無限に循環し付加価値を生み出すことになる。