2024/10/07
「加和太のコンクリは 【ココ】 がすごい!!」 残コンと脱炭素の関係について(10月30日技術発表会原稿)
今年加和太の本社プロジェクトで採用されたコンクリートは今をときめくカーボンニュートラル。 そのコンクリートはプロジェクトに用いられたコンクリートの残渣「残コン」を高度利用サーキュラーエコノミーを実現したことでも話題を集めた。
加和太のコンクリ【ココ】がすごい!
加和太のコンクリぱっと見普通の生コン、されど?
こちらが、ご紹介する加和太建設新社屋外構(駐車場)舗装に採用された特殊コンクリート。 配合されている骨材は100%残コンを由来とし、一部には本社躯体工事で余剰となったものも含まれている。つまり、用いられたコンクリートを全く無駄なく利用して製造された生コンクリートという特徴を有する。さらに、残コンをCO2固定媒体とした混和材料(CCU)や結合材の置換によるCO2排出量抑制などの特徴が挙げられるコンクリート舗装の実装としては世界に先駆けた事例となった。
関連記事:1tあたり159kgのCO2を固定したCCUコンクリートの製造・出荷・施工は当たり前に行われています
残コンとは?
生コンスラッジ
こちらは、トロンメルやフィルタープレスなどの装置を用いて減容化(骨材の回収や脱水処理)された残コン成れの果て。 生コンスラッジと呼ばれ通常は最終処分場で埋め立て処分されている。なお、その廃棄コストは年々高騰の一途を辿り生コン価格の高騰を後押ししている。
骨材は100%「残コン」が由来
残コンがまだフレッシュで柔らかい状態のうちに加工して得られた粒状化再生骨材(原石)。
当該コンクリートに用いられた骨材ストック状況。駐車場や隣接する三島市公道に用いられたコンクリートの骨材はすべて残コン流浄化再生骨材であり、CO2排出量削減に貢献しています。
駐車場舗装コンクリート
加和太本社の駐車場コンクリートは全てそのカーボンニュートラルコンクリートとなっています。
三島市公道も同じ配合で
なお、当該コンクリートは世界に先駆けて公共事業に採用されたカーボンニュートラルコンクリートであることでも注目を集めた。
関連記事:戻りコン由来リサイクル材へ CO2 を固定したコンクリートによる 三島市道 施工
残コンの何がCO2排出削減なの?
「残コンを高度利用してるからCO2排出削減」とか言われても、簡単には納得いかないところだろう。ここでは、残コンの何がCO2排出削減なのか、他についてメカニズムを詳しく解説します。
CO2固定(CCU/DAC)
残コンを洗った後の汚水を沈澱させた上澄水。
透明だが水酸化カルシウムが飽和した状態となっている。
ストローで呼気(高濃度二酸化炭素)を上澄水に潜らせる。
白く濁った析出物の正体は炭酸カルシウム。 つまり、残コンに含まれている水酸化カルシウムが二酸化炭素と反応(DAC:Direct Air Capture)することで軽質炭酸カルシウムに変化するメカニズムをもって残コン由来の骨材や微粉末をCCU(Carbon Capture Utilization)材料としている。Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3
関連記事:目で見てわかる【残コン】高度利用がカーボンニュートラル社会に貢献する理由
CCU混和材料100kg/m3配合
こちらは、残コン由来の微粒分。如上化学反応により160kg-CO2/tの二酸化炭素固定量となっており、100kg/m3配合したことにより、生コンクリート1m3あたり16kgのCO2固定(カーボンネガティブ)となっている。
関連記事:「生コン工場の新しい時代の新しい役割」 各種CCU材料の製造メーカー
結合材のCO2排出量削減
施工の様子も普通の生コンクリートそのもの。 なお、結合材には高炉セメントB種を採用し、主なCO2排出源となるワイヤーメッシュ(鉄筋)使用しなかった。
高炉セメントB種のCO2排出量
CO2排出量 (kg/㌧)※1 | セメント1㌧あたりの使用量 | |||
---|---|---|---|---|
石灰石 (kg/㌧) | 石炭 (kg/㌧) | 電力 (kwh/㌧) | ||
ポルトランドセメント①
|
768 | 1,111 | 95 | 30 |
高炉セメントB種②
|
437 | 622 | 56 | 21 |
削減量(①-②)
|
331 | 489 | 39 | 9 |
削減率(%)
|
43% | 44% | 41% | 30% |
出典:セメントLCIデータの概要(セメント協会2016年度実績)
※1 購入電力分を含まない
※2 焼成用および自家発電用の合計
表からもわかるように、通常のセメント(普通ポルトランドセメント)を高炉セメントB種に置換するだけで、結合材におけるCO2排出量が43%も削減されていることがわかる。
今も加和太のコンクリはCO2を吸ってます(DAC)
なお、モニュメント周りの土間コンクリートはさらに付け加えて結合材に一切普通ポルトランドセメントを利用していないと言う特徴。 残コンに含まれるアルカリはアルカリ刺激としてSCMs(高炉スラグ微粉末など)の硬化促進をブーストする役割も果たしています。
関連記事: 「家建てる時とかどーせ購入するんだから選ぼうよ!」カーボンニュートラル
無筋コンクリートだから気にせずDAC
ようは中性化を脱炭素用語で言うとDACと言います。加和太の土間のコンクリは鉄筋入っていないのでなんぼでも中性化OKってこと。https://note.com/civilengineer_kb/n/n2be9232f86bd
路面温度がめっちゃ低い
こちら、加和太HQのモニュメント周りCN全部のせ生コン(土間)の温度を測る。「路面温度が低いんですよ、触ってみていただければお分かりになられます」とのご案内にさすが先生「温度計持ってきます」と普通に温度測定。
アスファルトとCN全部のせコンクリート(モニュメントまわり)の温度差はなんと10度超。駐車場や歩道だけでも広大な面積に及ぶ舗装を全てCNタイプに切り替えるだけでも日本の気候はいい方に変化するはずだ。「会いに行けるコンクリート?!」 林和彦先生(香川高専)と行く! CNツーリズム
今度はCN境界ブロック加和太の現場に提案!
そして、なんと。 今回加和太の本社で生まれたカーボンニュートラルコンクリートは境界ブロック(CN)として加和太の次なる現場で採用が決まりました。製造元は土屋建材。なんと、土屋建材で発生した残コンを生コンポータルが買い取って(これで産業廃棄物ではなく副産物として付加価値が生まれる)加工し原材料として採用した生コンクリートを原料としている。
関連記事: どこでも見かけることができるコンクリートブロックがCN化します
ON SITE X と JOIS 加和太のコンクリを全国・全世界へ!
ON SITE X とは地場ゼネコンの全国ネットワーク https://on-sitex.com/
JOISは生コン工場などコンクリート実務家らによる「みんなで作るみんなのラボ&オフィス」プラットフォーム。 今後静岡県伊豆・東部地域で生まれた加和太のコンクリートはON SITE X や JOIS を通して全国・全世界へ発信される。
「コンクリートをもっと身近に」
立派な貢献を果たすコンクリートをメディアリリースだけで終わらせることなく具体的に世界の景色を変えていくことこそコンクリート産業に求められていること。だから「伝える」情報発信が必須ですっ。
オワッコーン‼︎
作者・宮本充也
残コンステーションによる地域資源循環・脱炭素フロー
未利用資源「残コン」の高度利用を地域や組合単位で取り組むことで資源循環・脱炭素といった地域の課題を打破しつつ新たな付加価値(富)を創造する。地域や生コン組合主導の残コンステーションという提案。
Before:従来、建設現場で余剰となった生コンクリート(残コン)の大半は資源循環されることなく現地の中間処理業者らの手に委ねられあるいは最終処分場で埋め立て処分となっている。
After:一方、残コンステーションを実装した地域(生コン組合)では未利用資源として再定義され、廃棄されることなくフローチャートのように循環し、その過程で残コンやスラッジ水は「アルカリ刺激効果」を有し、CCU(Carbon Capture Utilization)材料としても脱炭素コンクリート(CNコンクリート)に貢献しうるマテリアルとして地域内で無限に循環し付加価値を生み出すことになる。