2023/07/05
「カーボンニュートラル社会を実現するジオポリマーコンクリートの製造販売」
セメントや骨材など天然資源に頼ることなく製造されるジオポリマーコンクリートをテーマに生コンポータルは事業再構築を果たす。
ジオポリマーコンクリートで事業を再構築します
全国に3000と点在する生コン工場こそが資源循環・地産地消・ホワイトカーボンのハブとして再定義されることが求められていますー。
既存事業の再構築
これまで、「オワコン」「オコシコン」といった環境にやさしいコンクリートの全国販売を行ってきたが、いよいよ「セメントを用いない」「CO2も循環可能な」コンクリートの全国製造・販売に向かう。
事業環境とその必要性
近年、国内外でさまざまな気象災害が発生しており、主要因には温室効果ガスが挙げられている。温暖化 に対する国際的な取り組みとして、1997 年には「京都議定書」、2015 年「パリ協定」、そして 2021 年に はグラスゴー気候協定(COP26)が制定されている。グラスゴー気候協定(COP26)では、約 120 カ国の 代表団、科学者、環境保護活動家など 2 万 5000 人以上が参加し、気候変動に向き合うため、協議が行われ、これら環境問題に取り組むことは急務であるといえる。
また、当社所在地にも隣する熱海市伊豆山では土砂災害が発生し、多くの人命が失われている。自然災害が身近にあることも、実際の体験から強い当事者意識を持っており、これらの環境への取り組みは企業とし ての至上命題であると認識している。
当社既存事業「残コン」の活用について
まず、残コンとは工事現場で使用されずに余ったり残ってしまった生コンのことを指す。設計の時点で、必要となる生コンの数量を予測し、打設しながら数量計算を行うものの、型枠内の鉄筋量や生コンの状態によっては、どうしても事前の計画と誤差が生じてしまう場合がある。さらに「足りない!」という状況にならないように、多少多めに発注することもあり、必ずと言っていいほど余る/現場から戻ってくる生コンがあり、 多くの生コン工場ではこの残コンの処理に追われている現状がある。無論、この残コンを産業廃棄物として処理する場合においても二酸化炭素排出を促してしまうため、業界内にて長年問題視されてきた。
直近においても、生コン事業者が「残コン」を新たに製造した生コンに混ぜ、正規品として別の現場に出荷し、建基法違反と判断される事案が発生するなど、業界ではこうした残コン問題が顕在化しており、その対応は急務であると言える。
これら、世界情勢における観点、当社を取り巻く業種・環境における観点の両面を鑑み、2050年のカー ボンニュートラルの実現に向けて、事業の再構築に取り組むことを決断した。
そこで当社は、大地を削らない、汚さない、蓋しない、循環するコンクリートの提供に向けて、「カーボンニュートラル社会を実現するジオポリマーコンクリートの製造販売」へ新たに挑戦する。
当社の強みである、2,400以上の顔の見える製造/施工アライアンスなどを活かすことで、ジオポリマーコンクリートの販売見込み先があることも鑑み、当該事業展開を行うことで早期の事業化が実現できるのではないかと思料している。当社としては実績のない取り組みであり、課題やリスクは存在するものの、補助事業を活かした機能面の優位性、価格競争力をもってすれば、本事業再構築の実現性は高いと判断している。
ジオポリマーコンクリートについて
上図は、弊社で開発中のジオポリマーコンクリートである。主原料としてフライアッシュ(火力発電所の副産 物で石炭の燃えカス・灰)および高炉スラグ微粉末(製鉄時の副産物で石灰が主成分)を使用したコンクリー トだ。また、製造過程で大量の CO2 が発生する一般的なポルトランドセメントを使わないコンクリートであ ることが特徴となっている。
一般的なコンクリートではセメントを構成要素とするため、セメント製造時(石灰石の燃焼時)に大量のCO2を排出してしまう。今回の補助事業で開発・提供を行うジオポリマーコンクリートは、高炉スラグ微粉末など製鉄時の副産物や残コン由来の骨材を利用して製造する ため、資源の循環を図ることが可能となる。
さらに当社では、コンクリート産業における残コン問題を解決すべく、混和剤以外の材料の全てを産業副産物としたジオポリマーコンクリートの開発に取り組んでいる。幾度にもおける研究・開発の結果、試験的に は資源循環・脱炭素の時代にこれまでの「リスク」だった残コンを、粒状化再生骨材にリサイクルし、ジオポリマーコンクリートの材料とすることに成功している。
サーキュラーエコノミーの実践
本取組みは、カーボンニュートラルの実現はもとより、サーキュラーエコノミーをも実現しうるものである。
「サーキュラーエコノミー」とは、日本語訳で 「循環型経済」を指し、これまで経済活動の中で廃棄されていた製品や原材料などを「資源」と 考え、リサイクル・再利用などで活用し、資源を循環させる、新しい経済システムを指す。世界的 な人口増加と経済成長を背景に、大量生産と大 量消費が繰り返される中で、処理しきれなくな った大量の廃棄物が自然環境を汚染している現 代において、ジオポリマーコンクリートの提供に よって、資源循環も図れ、サーキュラーエコノミ ーの仕組みにも合致するものと想定している。
また、コンクリートは地球上で水の次に使用量の多い材料である。「コンクリートは人工の石」であると称され るほど、地球上のありとあらゆる場所において使われている。それゆえ、本事業におけるイノベーションの影 響する範囲は極めて大きく、世界全体への波及効果が見込めることは間違いない。
CO2吸収・固定
コンクリートは高アルカリ性で、pH が 12~13 程度ある。そし て、空気中の二酸化炭素を吸収し、コンクリート中の水酸化カルシ ウムが徐々に炭酸カルシウムとなり、コンクリートのアルカリ性が 低下する、いわゆる中性化という現象が起こる。 (Ca(OH)2+CO2→CaCO3∔H2O)
それゆえ、残コンクリートを用いて製造するジオポリマーコンクリ ートには高い二酸化炭素の吸収効果があり、事業の実施による社 会全体への環境面における波及効果があると確信している。
さらに、上図左のように上澄水(コンクリートの製造工程で排出される洗浄廃水)を散水すると、炭酸カルシ ウムが析出する(二酸化炭素を吸収して中性化する)ことも分かっている。また、上図右のように、ジオポリマ ーコンクリートを加工することで、広大な表面積を持つことが可能になり、空気中に触れる面積が大きく、そ の分二酸化炭素の吸収量が大きくなる。これらの要素から、本事業は、資源の循環を図ることが可能になるだけでなく、二酸化炭素を大きく吸収する取り組みとなり、地球環境の維持に寄与することは間違いない。
地球規模でのイノベーションへ
当社は上記図(青丸部分)のように全国の生コン製造事業者をデータベース化している。本取組では当該生コン製造事業者に、ジオポリマーコンクリートを製造するのに必要な混和剤である"mape cube geo"の販売も行う。この販売実施は、マネタイズの側面だけでなく、カーボンニュートラル社会の実現に必須となる。元来、生コン製造事業者は半径20~30kmの商圏でしか商品(生コン)を提供できない。 生コンが現場に到着するまでに固まってしまってはならないため、ミキサー車の移動時間(約1.5時間)がそ のまま商圏になってしまうという商品特性上の課題がある。それゆえ、当社が独占して本補助事業における販売を行っていては、当該商圏の問題もあり、日本社会全体にジオポリマーコンクリートを普及させ、真にカーボンニュートラル社会を実現するという目的を達成できない。よって、弊社独自の開発によって得られた 配合等のノウハウも開示し、混和剤である"mape cube geo"の販売を行うことで、全国の生コン製造事 業者がジオポリマーコンクリートの製造へ着手できるように取り組む所存である。
こうした取り組みによって、生コン工場がある地域(世界中のありとあらゆる場所)での再現性を実現で き、点のイノベーションが面に応用可能となる。
資源循環・地産地消・ホワイトカーボン
いやはや、楽しみっす。
「コンクリートをもっと身近に」
というわけで、脇目もふらずに前進ですっ。人の噂話だとか批判とかはいいからみんなも自分のできることに集中して貢献していこうっ。
オワッコーン‼︎
この壮大なストーリーがもし実現したらきっと地球環境問題の解決に大きな一歩となるでしょう。RRCS(代表理事・野口貴文先生)が唱える「ホワイトカーボン」が新たな人工インフラ生態系として循環を始めますー。
作者・宮本充也
残コンステーションによる地域資源循環・脱炭素フロー
未利用資源「残コン」の高度利用を地域や組合単位で取り組むことで資源循環・脱炭素といった地域の課題を打破しつつ新たな付加価値(富)を創造する。地域や生コン組合主導の残コンステーションという提案。
Before:従来、建設現場で余剰となった生コンクリート(残コン)の大半は資源循環されることなく現地の中間処理業者らの手に委ねられあるいは最終処分場で埋め立て処分となっている。
After:一方、残コンステーションを実装した地域(生コン組合)では未利用資源として再定義され、廃棄されることなくフローチャートのように循環し、その過程で残コンやスラッジ水は「アルカリ刺激効果」を有し、CCU(Carbon Capture Utilization)材料としても脱炭素コンクリート(CNコンクリート)に貢献しうるマテリアルとして地域内で無限に循環し付加価値を生み出すことになる。