2023/10/18
【熊本】「産官学が 《共に成長する》 玉名発の超高齢化・人口減少社会におけるコンクリートのあり方とは」玉名市
熊本県玉名市。ここで用いられる「オワコン」は普通のオワコンではない。誰かが誰かに手を差し伸べる思いやりあふれる「オワコン」は生コン工場の困り物「残コン」を由来として、市民の困りごと「雑草」を抑えるために用いられる。そのあり方は「玉名モデル」としてやがて語り継がれるることとなる。
行政 × 生コン組合 × 建設業協会 = オワコン
縦割り・分断は往時には巨万の富を生み出す社会モデルとして機能していましたが、現代ラストワンマイルの自由な活動を阻むことなどが問題視されています。産官学が全く新しい文脈で連携する「玉名モデル」の今後に期待が集まりますー。。
玉名市職員らによる「オワコン」実験Before
前回の実験に続き、横浜国立大学細田暁先生をお招きして玉名市では「オワコン」の社会実装による雑草メンテナンスの最適化についての議論が行われた。
関連記事:【玉名モデル】「行政自身が体験し学び理解して整備されるインフラが長寿命化や資源循環を創造する」
「残コン」と「雑草」をつなげる
土佐屋生コンさんで発生している生コンスラッジは「残コン」由来。およそ全ての生コン工場がそうであるように、スラッジケーキの処分には高額な費用負担を強いられている。
玉名市、横浜国立大学、土佐屋生コン、HAYN隊(渋谷建材、生コンポータル他)らが現地で「数分の立ち話」した結果、生コン工場の困りごと「残コン」と玉名市や市民の困りごと「雑草」をつなげる、というアイディアに辿り着く。
「行政が残コンの処分場を提供」木下義昭
現場の数分の立ち話で決まったことは、年間1億円支出している玉名市の「雑草対策」(しかも、その額は年々増加傾向)と生コン工場の困り物「残コン」をつなげる、というもの。このスキームを実現するために、玉名市・土佐屋生コン・HAYN隊が直ちに市内の里道(りどう)などをフィールドとして生コン工場で日々発生する残コンを「オワコンの素(Y弾)」で改質「オワコン」にして、雑草対策を実施し、経過を観察することとなった。「行政が残コンの処分場(を兼ねた雑草対策)を提供する」「そのフィールドは取りも直さず次なる資源循環のためのストックとなる」(玉名市職員・木下義昭さん)。
スキーム実現のため市職員らによる「オワコン」DIY
残コンを改質したものと見立てた「オワコン」の敷き均しは全て玉名市職員らによるDIY。
市職員らのアイディアで製造された特性タンパで締め固め。
市職員ら自身で「オワコン」を体験することによって絵に描いた餅ではないスキームとなっていく。
「花を植えるようなもの」松昭昭吾(マツ)
さらに、法面(傾斜地)での「オワコン」打設も試される。
こちらも職員らのアイディアで製造されたお手製タンパは法面における転圧用。
玉名市職員らが実際に体験してご理解されたように、たとえばシルバー人材など高齢の方による世耕も十分可能な施工性が「オワコン」の特徴であるため、たとえばボランティアやシルバーさんがあたかも「花を植えるように」残コンで「オワコン」を作り、市の雑草対策に貢献するという構想も(「デミーとマツ」で著名な松永昭吾さんのコメント。また、同氏は「特記仕様書に記述」することで利用促進が生まれるなど多くのアイディアをお披瀝されていた)。
我が国は他に類を見ない「超高齢化社会」「人口半減」に臨み、こうした産官学の取り組みがイノベーションとして世界から注目を集めるはずだぜ。
「共に成長する」が「コンクリートの語源」細田暁
「残コンからオワコン」を想定した実験After。手前が歩道に、奥が法面。今回、玉名市(官)の木下義昭さんの声かけに賛同して協働した、横浜国立大学(学)、土佐屋生コン・HAYN隊(産)の試みはやがて「玉名モデル」と呼ばれ、高齢化社会や人口減少の最も深刻な我が国から全く新しい「共に成長する」コンクリートのあり方を提示することになる。(引用:「ともに成長を。コンクリート。」細田暁)
「コンクリートをもっと身近に」
Y弾がなかったからこそ、「残コンをそのままオワコンに適用しよう」なんてまさに「資源循環」の顕現のようなアイディアが僕たちの頭上に降ってきて実行に向かうことになりました。今後の玉名市の進捗から目が離せません。これだからやめられないね、「コンクリート」(共に成長する)。
オワッコーン‼︎
これまで数十年という歳月を経てもなお解決を見なかった「残コン」が有志らの数分の立ち話で山が動く空間は壮観だったようですー。。
作者・宮本充也
残コンステーションによる地域資源循環・脱炭素フロー
未利用資源「残コン」の高度利用を地域や組合単位で取り組むことで資源循環・脱炭素といった地域の課題を打破しつつ新たな付加価値(富)を創造する。地域や生コン組合主導の残コンステーションという提案。
Before:従来、建設現場で余剰となった生コンクリート(残コン)の大半は資源循環されることなく現地の中間処理業者らの手に委ねられあるいは最終処分場で埋め立て処分となっている。
After:一方、残コンステーションを実装した地域(生コン組合)では未利用資源として再定義され、廃棄されることなくフローチャートのように循環し、その過程で残コンやスラッジ水は「アルカリ刺激効果」を有し、CCU(Carbon Capture Utilization)材料としても脱炭素コンクリート(CNコンクリート)に貢献しうるマテリアルとして地域内で無限に循環し付加価値を生み出すことになる。